螺旋式うぇーぶ

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バラノラが長文を書きたいときのためのブログ

斬機の数学用語解説

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※本記事は抽象的な数学の内容を含みます

※本記事は遊戯王OCGの内容をほぼ含みません

 

やあ。

みんなは、「斬機」カテゴリを知ってるかな?

そう、あの、シグマだとかナブラだとかいうよく分からん名前の、ロボットみたいな見た目をしたカテゴリだ。

きょうは、その「斬機」のカード名に使われている“数学の用語”について解説していこう。

 

 

アディオン

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サブトラ

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マルチプライヤー

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ディヴィジョン

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それぞれ足し算({ + })、引き算({ - })、掛け算({ × })、割り算({ ÷ })のこと。

英語のaddition、subtraction、multiplication、divisionから来ている。

これら4つは合わせて四則演算と呼ばれ、最も基本的な2項演算(2つの数を使って1つの数を作る演算)である。

なおみなさんは自然数({ 1,2,\cdots })、整数({ 0 },負の数も含めたもの)、有理数(分数も含めたもの)といった数の種類をよく知っていることと思うが、自然数、整数に関してはこの四則演算について閉じていない

“閉じていない”とは、自然数、整数同士の2項演算の結果が、それぞれ自然数、整数となるとは限らないということ。

自然数は引き算について閉じていない({ 2-5 }自然数ではない)し、整数は割り算について閉じていない({ 3÷(-7) }は整数ではない)ことが簡単に確かめられるだろう。

ここで、有理数まで数の範囲を広げれば、これは四則演算について閉じていることになる。

どんな分数同士の2項演算の結果もまた、分数となるからだ。

この有理数のように、「四則演算について閉じている数の集合」のことを、数学用語で(たい)(field)と呼ぶ。

四則演算が重要なのは、この“体”という概念が重要であるからに他ならない。

シグマ

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{ Σ }(sigma)と書く。

{ Σ }は総和記号である。

数列{ \{a_n\} }に対して、{ \sum_{k=1}^n a_k }とは、{ a_1 }から{ a_n }までの総和

{ \displaystyle \sum_{k=1}^n a_k=a_1+ \cdots +a_n }

を表す。

また、これの極限

{ \displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n a_k=a_1+ \cdots +a_n+ \cdots}

は、数列{  \{a_n\} }の項を無限に足し合わせていったものを表すことになる。

これを級数と呼び、単に

{ \displaystyle \sum_{k=1}^\infty a_k }

と書く。

結局、表記を簡略化するための記号ということだね。

 

ファイナルシグマ

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シグマ({ Σ })と同じ“シグマ”だが、{ ς }と書く。

これはシグマの語末形(ファイナル)と呼ばれる形である。

({ Σ }は大文字、{ σ }は小文字)

数学では、この記号はシグモイド関数を表す記号として使われる。

シグモイド関数とは、

{ \displaystyle ς(x)=\frac{1}{1+e^{-x}} }

という形の関数のことである。

(※これは標準形と呼ばれる形)

グラフはこうなっている。

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この通り、値が{ 0 }から{ 1 }に変化していくなめらかな関数となっている。

ふつう、値が{ 0 }から{ 1 }に変化する関数であれば、こういうものを用いればよい。

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{ \displaystyle f(x)= \begin{cases} 0 \,\,\, (x \lt 0) \\ 1 \,\,\, (x \ge 0) \end{cases} }

ただ、これは{ x=0 }において微分不可能なのである。

このような{ 0 }から{ 1 }に変化する関数を扱いたいとき、実用上それが微分可能な関数であってほしいことが多いため、コレの代わりにシグモイド関数を使うのである。

考えた人は頭がよいね!

ダイア

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{ ⌀ }と書き、直径記号(diameter)と呼ぶ。

円の直径のことである。

この記号のみ他の記号とは使い方が異なり、数式の中で使うのではない。

図の中で「{ ⌀10 }」などと書き、直径の長さが10であることを表すために使う。

ぶっちゃけこれだけものすごく浮いている。

 

マグマ

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代数的構造のひとつ、マグマ(magma)のことである。

亜群とも呼ぶ。

{ M }という記号で書かれることが多い。

代数的構造とは、ある規則を持つ、ある集合と演算の組のことである。

先ほど口走った、“四則演算のできる数の集合「体」”も代数的構造の一種である。

「群」という代数的構造があるのだが、「マグマ」は群よりも満たさすべき規則が少ない代数的構造なので、「亜群」と呼ばれているのだ。

では、マグマとはどのような代数的構造なのか。

集合と演算の組{ (M,×) }がマグマであるとは、

{ M×M→M }

を満たすことである。

つまり、集合{ M }の要素同士を使った2項演算{ M×M }の結果もまた、{ M }の要素となればよい、というものである。

(※こういうのを、{ M }{ × }について“閉じている”と呼ぶのであった)

自然数同士の足し算、整数同士の掛け算など、マグマとなる集合と演算の組はそこら辺にいっぱいあるが、注目すべきはマグマはこれら2つなんかよりもよっぽど、緩い構造でもよいのである。

例えば、整数同士の掛け算は

・任意の{ a,b,c }について{ (a×b)×c=a×(b×c) }

・任意の{ a }について{ a×e=a }となる({ a }には依存しない){ e }が存在する

・任意の{ a,b }について{ a×b=b×a }

などが成立するが、マグマでは別にこれらは成り立たなくてもよい。

唯一マグマが要求する条件は、演算について閉じているということだけなのだから。

 

ナブラ

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{ ∇ }と書き、ナブラ演算子(nabla)と呼ぶ。

これは微分演算を表す記号で、ベクトルとして扱う。

{ xyz }座標空間においては、{ ∇ }

{ \displaystyle ∇=( \frac{∂}{∂x} , \frac{∂}{∂y} , \frac{∂}{∂z} ) }

(※ { \frac{∂}{∂x} }偏微分記号で、関数{ f(x,y,z) }に対して{ \frac{∂f}{∂x} }とは、{ f(x,y,z) }{ y,z }を定数だとみなし{ x }について微分したもののこと)

というベクトルとして扱い、関数{ f(x,y,z) }に対してその関数の勾配、ベクトル場{ {\bf{v}} (x,y,z)=(v_x,v_y,v_z) }に対してそのベクトル場の発散回転などといったものを表すために使われる。

それぞれ、

勾配:{ \displaystyle ∇f=( \frac{∂f}{∂x} , \frac{∂f}{∂y} , \frac{∂f}{∂z} ) }

発散:{ \displaystyle ∇ \cdot {\bf{v}}= \frac{∂v_x}{∂x} + \frac{∂v_y}{∂y} + \frac{∂v_z}{∂z} }

回転:{ \displaystyle ∇×{\bf{v}}=( \frac{∂v_z}{∂y}-\frac{∂v_y}{∂z} , \frac{∂v_x}{∂z}-\frac{∂v_z}{∂x} , \frac{∂v_y}{∂x}-\frac{∂v_x}{∂y} ) }

となる。

このように、{ ∇ }は特定の作用素ではなく、作用素を項とするベクトルなのである。

便利!

 

ラプラシアン

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{ Δ }と書き、ラプラス演算子(laplacian)と呼ぶ。

ラプラシアンは、ある関数に対してその勾配の発散を求める作用素である。

勾配は{ ∇ }、発散は{ ∇ \cdot }だったので、すなわちラプラシアンは、

{ \displaystyle Δ = ∇ \cdot ∇ }

ということになる。

{ xyz }座標空間においては、

{ \displaystyle Δ = ∇ \cdot ∇ }

{ \displaystyle =( \frac{∂}{∂x} , \frac{∂}{∂y} , \frac{∂}{∂z} ) \cdot ( \frac{∂}{∂x} , \frac{∂}{∂y} , \frac{∂}{∂z} )  }

{ \displaystyle = \frac{∂^2}{∂x^2} + \frac{∂^2}{∂y^2} + \frac{∂^2}{∂z^2}  }

と書ける。

つまり、関数{ f(x,y,z) }に対してその勾配の発散は、

{ \displaystyle Δf =  ( \frac{∂^2}{∂x^2} + \frac{∂^2}{∂y^2} + \frac{∂^2}{∂z^2} )f }

{ \displaystyle = \frac{∂^2 f}{∂x^2} + \frac{∂^2 f}{∂y^2} + \frac{∂^2 f}{∂z^2}  }

ということだ。

楽しいね!

 

ダランベルシアン

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{ □ }と書き、ダランベール演算子(d'alembertian)と呼ぶ。

ダランベルシアンは、ラプラシアンミンコフスキー空間に適用させたものである。

ミンコフスキー空間とは、{ xyz }空間の3つの軸に時間軸{ ct }を加えた4次元の空間(を表せるもの)のことである。

座標系{ (ct,x,y,z) }においてラプラシアンはどうなるかというと、

{ \displaystyle □ = \frac{∂^2}{∂(ct)^2} - \frac{∂^2}{∂x^2} - \frac{∂^2}{∂y^2} - \frac{∂^2}{∂z^2}  }

{ \displaystyle =\frac{1}{c^2} \frac{∂^2}{∂t^2} - Δ   }

(ミンコフスキー空間では{ {\bf{v}}^2 }を計算するとき全ての項の積和を取るのではなく、前半の積和から後半の積和を引いたものを用いる。これをミンコフスキー計量という。今回は{ ct }が前半、{ x,y,z }が後半にあたる)

となる。

4次元だから、{ □ }という記号なのだ。

かっちょいいね!

 

ナユタ

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那由多。

{ 10000 }のべき乗を表す数詞のひとつで、{ 10000^{15}=10^{60} }を表す。

{ 10000 }のべき乗を表す数詞とは、{ 10000^1 }から順に、万、億、兆、京(けい)、垓(がい)、𥝱(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由多(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうたいすう)、のことである。

最後の“無量大数”は、{ 10000^{17}=10^{68} }を表す。

小学2年生のとき算数の教科書に書いてあるこれを一生懸命覚えて暗唱することに熱を上げたことのある人も少なくないだろう。

あと個人的な推測ではあるのだが、最後の4つ「恒河沙阿僧祇、那由多、不可思議」が敵の組織の幹部4人組の名前であった場合、那由多は間違いなく紅一点の美少女キャラクターであるだろう。

 

方程式

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方程式(equation)とは、{ x }などの記号を含む等式のことである。

この{ x }未知数と呼び、等式を変形して{ x= \cdots }の形にする、すなわち未知数の値を求めることを方程式を解くという。

そして、その{ x }の値のことを方程式のと呼ぶ。

また、関数{ f(x) }とその導関数{ f'(x) }({ f(x) }微分したもの)、任意階の導関数を含む等式を微分方程式と呼び、変形して{ f(x)= \cdots }の形にすることを微分方程式を解くという。

そして、その関数を、微分方程式と呼ぶ。

「方程式」という言葉は日常生活や決闘において「○○が成功するための方程式」「勝利の方程式」などポジティブなこと(方程式が解ける)のフラグとして用いられることがあるが、そもそも方程式には解が存在しないことや、任意の要素が解になってしまうこと、解は存在するが解を表記できないことなどがある。

つまり、勝利の方程式が全て揃ったとしても、その方程式が解ける保証などどこにも無く、勝利できるとは限らないということである。

(方程式はあくまで等式であり、解けるか解けないか、解がどうなのかについては条件を課さないのだ)

 

帰納法

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数学的帰納法(mathematical induction)のこと。

数学的帰納法とは、自然数{ n }に関する主張{ P(n) }が任意の自然数について成り立つということを証明するための手順である。

その手順とは以下。

i. { n=1 }のとき成り立つことを示す

ii. 任意の{ k }について、「{ n=k }のとき成り立つならば{ n=k+1 }のとき成り立つ」が成り立つことを示す

以上。

この2つを示せば、i.により{ n=1 }のときは成り立ち、これとii.により{ n=2 }のときも成り立ち、これとii.により{ n=3 }のときも成り立ち、・・・と任意の{ n }について成り立つことが示されたことになる。

考えた人すごいね。

で、話は一転「数学的帰納法」という名前についてだが、まず数学とは関係無い用語である帰納法演繹法について説明する。

帰納法とは、特殊な事象から一般の法則を推論する思考法のことである。

(特殊→一般)

演繹法とは、一般の法則から特殊な事象を推論する思考法のことである。

(一般→特殊)

ということは、演繹法必ず正しい推論であり、帰納法正しいとは限らない推論であるということである。

なぜならば、一般の法則というのはどんな特殊な事象もそれを満たすはずであるが、特殊な事象があってもそれが一般的であるとは限らないからだ。

(この国の羊はみな黒い。よって、あそこにいる羊は黒いはずだ。→正しい推論

あそこにいる羊は黒い。よって、この国の羊はみな黒いはずだ。→正しくない推論)

一方、数学で行う推論は正しくなくてはならないので、数学で行う推論に帰納法を用いることは無い。

のだが、「数学的帰納法」はなぜか名前に「帰納法」とついている。

これは純粋な命名の間違いであり、当然「数学的帰納法」は「帰納法」ではない。

なんとなく帰納法っぽく見えるからという理由だけでこのような名前になってしまったのだ。

かわいそうだね数学的帰納法

 

超階乗

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超階乗(superfactorial)のことであり、自然数{ n }に対して{ n$ }と書く。

まず、階乗というものがある。

自然数{ n }の階乗{ n! }とは、

{ \displaystyle n!=n(n-1)(n-2) \cdots 3 \cdot 2 \cdot 1   }

のことであり、つまり{ n }から{ 1 }ずつ小さくしていったものを全部掛けた数のことである。

これに対して{ n }の超階乗{ n$ }は、

{ \displaystyle n$ = \underbrace{n!^{n!^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{n!}}}}}}_{n!個}   }

のことである。

階乗よりも圧倒的に大きな数となり、その大きくなる速さは日常で使うレベルの数の大きさをすぐ遥かに越える。

少し計算してみよう。

 

{ \displaystyle 1$ = 1! = 1   }

 

まあ。

 

{ \displaystyle 2$ = 2!^{2!} = 2^2 = 4   }

 

まあ。

 

{ \displaystyle 3$ = 3!^{3!^{3!^{3!^{3!^{3!}}}}} = 6^{6^{6^{6^{6^{6}}}}} = 6^{6^{6^{6^{46656}}}} = \cdots   }

 

ん?これちょっとやばk

 

{ \displaystyle 4$ = 4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!^{4!}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}} = 24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24^{24}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}}   }

 

ア゜

 

・・・

 

というふうに、いきなり訳分からんほど大きな数が登場する。

しかし、このように理解し難いほど大きな数も、{ 4$ }{ 5$ }と書けば平気で扱える。

思えば我々は、例えば{ 200 }那由多個のモノなど実際に見たこともないはずなのだが、{ 200 \cdot 10^{60} }と書けば、なんかその大きさを理解できているような気がするのだ。

それほど、数の表記法というのは偉大なモノなのである。

そんな、理解し難いほど大きな数を表記することを研究する分野を、その数そのものの名前で巨大数といい、インターネット上でも盛んに研究されてきた。

ニコニコ動画などには関連の動画があるので、興味のある人はぜひ見てみることをおすすめする。

 

・・・

 

以上!

 

これで現時点で発売している全斬機カードのカード名に使われている記号・用語を扱った。

 

特に、斬機モンスターは全て1文字の記号で表記できる({ +,-,×,÷,Σ,ς,⌀,M,∇,Δ,□ })ので、斬機モンスターを呼ぶとき3,4文字の名前を書くのが面倒であれば、これらの記号で簡略化して書くことができる。

 

また、これら記号の意味を知っていればアディオンとサブトラを見て「どっちが攻撃力アップでどっちが攻撃力ダウンだっけ?」などの疑問を抱くこともなくなる。

(私は対戦相手に言われたことがある)

 

これを見て斬機に興味を持った人は、ぜひ斬機デッキを組んで遊んでみようね!

 

・・・

 

それでは。

 

・・・

 

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