螺旋式うぇーぶ

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バラノラが長文を書きたいときのためのブログ

「ドロー、スタンバイ、メイン」パチパチ

 

「ドロー、スタンバイ、メイン」パチパチ

 

これは遊戯王の大会シーン、対戦動画、さらには身内同士での対戦中などにおいても、馴染みの深い光景だと思います。

発している言葉の意味は、大抵の場合「これからぼくのターン始まるよ〜」程度のものです。

ドローフェイズやスタンバイフェイズ、メインフェイズに関する優先権の確認をしているようにも聞こえます。

 

主張

この記事の主張は以下です。

 

①「ドロー、スタンバイ、メイン」という掛け声は、明確な優先権の確認を行うことができていない。

②さらに、優先権の確認の省略にすらなっていない。

 

ここからは、この主張自体の説明と、主張の理由を説明します。

主張を読んだだけで言いたい事が分かってくれたなら、以下の説明は必要無いかもしれません。

 

(注)この記事は、特定の掛け声の性質を私なりに分析した結果を記したものです。

その掛け声の是非を問うたり、掛け声をする人への意見を述べるものではありません。

 

主張の説明

①「ドロー、スタンバイ、メイン」という掛け声は、明確な優先権の確認を行うことができていない。

とはどういうことかというと、「ターンプレイヤーが宣言するべき優先権の放棄を、漏れなく、一意的に、非ターンプレイヤーに伝えることができていない」ということです。

 

優先権の確認のタイミング

優先権の確認というのは本来、あるタイミングにおいて優先権を持っているプレイヤーが「優先権を放棄します」という旨を優先権を持っていないプレイヤーに伝えるということによって、行われます。

今回の議論において重要なのは「あるタイミングにおいて」という部分です。

優先権を持っているプレイヤーがタイミングを有耶無耶にしたまま「優先権を放棄します」とだけ相手に伝えたとしても、相手はどのタイミングでの優先権が渡されたのか分かりません。

 

「スタンバイ」は意味が一意的でない

今回の例では、例えば「スタンバイ」とだけ言っています。

(それが優先権の放棄である事は理解できたとしても)それは「スタンバイフェイズの優先権を放棄します」「スタンバイフェイズに入ります(i.e.ドローフェイズの優先権を放棄します)」、両方の解釈が可能なので、言われた側はどちらなのか判別することができません。

つまり、優先権の放棄の伝わり方が一意的でないのです。

実際の現場では、非ターンプレイヤーがスタンバイフェイズに何か発動したければ「スタンバイ(フェイズの優先権を放棄します)」と言われてから発動すればよいのか、「メイン(フェイズに入ります)」と言われてから発動すればよいのか、非ターンプレイヤーがいちいち確認しなければならなくなってしまいます。

(優先権を漏れなく一意的に確認できているのなら、本来は非ターンプレイヤー側が「スタンバイいいですか?」などと言う必要は無いはずです。相手の優先権の放棄を聞き届けた後、ただ単にカード発動するだけで何も問題は無いのですから。)

 

反論

ここで、以上に対する反論として

「いや『メイン』は『メイン終了します』なわけないのだから、『スタンバイ』も『スタンバイ終了します』ではないでしょ。解釈は一意に定まっている。」

というものがあると思いますが、この反論は不当です。

なぜなら、これは解釈の一意性を「こうだから、こうであるはずだ」という、相手が認めているとは限らない帰納的な推論に委ねているからです。

もしこのような勝手な解釈をこちらが行ったとしたら、相手が悪質なプレイヤーであれば、わざと解釈をこちらとズラして戦況を有利にするということをされる可能性もあります。

(例)

A「スタンバイ」

B「(ドローフェイズに発動したいカードは無いので)どうぞ」

A「メイン」

B「スタンバイフェイズにこれ発動します。」

A「スタンバイ終了の宣言時にどうぞっていいましたよね?だめです」

(終)

複数の解釈が可能であって、相手がどういう解釈を行ってもよい状況というのは、結局解釈を一意に定めるための確認というのが別途必要になってしまうのです。

 

省略にすらなっていない

ターンが始まってからメインフェイズ中の行動が始まるまでにターンプレイヤーが優先権を放棄しなければならないのは、何もなければ「ドローした時」「ドローフェイズを終了する時」「スタンバイフェイズを終了する時」の3回です。

本来であれば、これら全てのタイミングで、どのタイミングなのか分かるように、優先権の放棄を伝える必要があります。

それを毎ターン非ターンプレイヤーの返事3回も含めてきっちりやるのが面倒だから、「ドロー、スタンバイ、メイン」はそれを手早く済ますための省略のつもりなのかもしれません。

しかし、省略は正しいルールの範囲内で行うべきです。

上で説明した通り、もはや優先権の確認としては意味を成していないとすら言える状態の「ドロー、スタンバイ、メイン」は何を省略しているのかルール上はっきりしていないただの呪文なわけですから、非ターンプレイヤーが何か発動したい場合はもちろん、何も発動しない場合でも(問題こそ起きないかもしれませんが)モヤモヤが残ります。

省略というのは時間や手間の都合上現実的には必須なものですから、さらなる手間やトラブル、モヤモヤを無くすためには、ただの呪文ではなくルール上意味の通った省略をするとよいと思います。

 

省略の例

全てのプレイヤーはこう省略すべきだとか、こう省略すれば必ずトラブルやモヤモヤは無くなるとかいうことを言いたいわけではありませんが、ルール上意味の通った省略の例をここで紹介したいと思います。

もちろん近いことを実践している方は多いと思います。

それは、ターンが始まってからメインフェイズ中の行動が始まるまで何もしないのであれば

「メインフェイズに入ります」

と伝えることです。

「メイン入ります」でもよいと思います。

「メイン」ではだめです。

「入ります」「終了します」をつけていればどのタイミングなのかということははっきりしていますし、3個の優先権のうち3個目の優先権の放棄を最初から伝えれば相手は3回の返事をする必要もありません。

 

おわりに

以上です。

この記事で言いたかったことは、

①「ドロー、スタンバイ、メイン」という掛け声は、明確な優先権の確認を行うことができていない。

②さらに、優先権の確認の省略にすらなっていない。

ということです。

是非を問うたり意見を述べたりしたいわけではありませんので、以上の主張そのものをもってこの記事を終了したいと思います。

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

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